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　9月にニューヨークで行われた全米オープンテニスでベスト16入りしたサニア ・ミルザーが、インドで旋風を巻き起こしています（試合会場のフラッシング・ メドウズ公園は、全米随一のインド人街がほんとに至近なので、アメリカの観客 もインド人がすごかったんではないだろうかと想像できますが・・・）。
　インドのテニスは伝統があり、アムリトラージ、クリシュナン、最近ではパエス とブパティなど世界レベルの一流選手を多数出していますが、それはみんな男子 の話。女子の場合、まだスポーツ選手自体が少ないのに、それが世界レベルで、 若くて可愛いとなれば一大センセーション。18歳という年齢といい、ぴちぴちの アスリート系健康美といい、インドの宮里藍ちゃんと言ってもいいような存在で すね。

　サニアはジュニア選手の頃から注目されていたのですが、当初から気になって いたことがあります。テニスといえば最近はビーナスとセリーナのウィリアムズ 兄弟、シャラポワに見られるように、ビキニのような、スリップドレスのような、 とても露出度の高く、セクシーなテニスウエアで、走り回ったり飛んだりと大胆 な動作が要求されます。サニアは名前からわかるようにイスラム教徒なのですが、 女性のムスリムがそんなテニスをすることが許されるのか、それともサニアが子 どもだから許されるのか、と少々いらぬ心配していたのです。
　厳格なイスラム社会では、女性のスポーツは禁止か、厳重に覆った囲いの中で、 女性だけが集まってプレーされます。そんな環境ではトップ選手が育つようなハー ドなトレーニングをしたり、まして大衆の面前で行われる国際試合に臨むことは 難しいでしょう。ちょっと年配の女性から時々聞く話ですが、少女時代にスポー ツをやっていて筋もよかったが、初潮を迎えたことをきっかけに、あるいは婚約 が成立した時（当時は多くが10代）に、一切スポーツをやらなくなった（もちろ ん親の指示でやめた）そうです。

　父はスポーツ・ジャーナリストで、サニアにテニスを教えたのもこのお父さん。 その一方でサニアも含めて一家は一日5回のお祈りを欠かさない敬虔なムスリム。 信心深さと現代性が適度に融合しているご家庭であるわけです。サニアは才能が 見出されると、ブパティなど一流選手の指導で、海外で最先端の指導を受けるよ うになります。
　けれど現在彼女の一家が基盤としているハイデラバードは、今でこそITで有名 な先端都市ですが、かつてのインド最大のムスリム領主のお膝元として、最も保 守的なイスラム社会が残る社会です。

　全米の後、サニア人気の大爆発で、世事に疎いイスラムのお坊さんたちにもサ ニアの存在が知られたからでしょうか。「サニアの短いスカートを禁止するイス ラム宗教令（ファトワ）を出すべき」との声が、保守層から上がったのでした。
　さすがに現代インドの高位聖職者は、世界ランキングのプレイヤーにブルカを 被せることはできませんでした。「サニアはインドの誇りだ。それに長いスカー トでは一流のプレーはできない」という声明を出しました。
　しかしこの声明はトップ選手だからサニアに限って許す、というニュアンスが 感じられます。サニアをダシに女の子がみんな大胆な服装をしては困るのです。 それでなくても女優やモデルなどインドの女の子たちの最近のお手本は、日本人 が見てもちょっと行き過ぎじゃないかと思うようなセクシーさで、グラビアを飾 り続けていますから。

目次

・India will Rock You!　第9回　「イギリス発、世界をクールにつなぐ音の旅人、ニィティン・ソーニー」 （渡辺　玲）
・私だけのインド料理講座中級編「ベンガル地方の野菜料理」（由利　三）
・India Stamp Collection: 16「メガドゥートはがきに見るインド郵便事情」（黒崎　卓）

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