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インド通信バックナンバー
1998.12.1発行、第242号
「インド通信」のホームページへようこそ。先月号で「インド通信」本誌はめでたく創刊20年となりましたが、ホームページも今月の更新で開設1周年となりました。私自身は成人する頃まで物を書くといったら原稿用紙、音楽ならばラジオとLPレコード、アナログ人間とまでは言わないまでも過渡期の世代です。よそのHPの凝りに凝った作りに感動しつつ（旅を扱うものが多いせいでしょうか、インド関連のページは写真も多くきれいですよね）も、普段は毎月一回の更新で精いっぱいですが、これからもよろしくお願いいたします。
さて、11月の初めに東京国際映画祭と東京ファンタスティック映画祭が開かれ、南アジアの映画が合わせて9本上映されました。ファンタ映画祭では、昨年あの「ムトゥ」がプレミア上映されたことから、今年もラジニカーントの作品とヒンディー語大ヒット「DDLJ」などが上映されました。「DDLJ」のパンジャーブ平原一面のサルソーン（カラシナ）畑でシャールクとカージョルが歌い踊るシーンはぜひとも大スクリーンで、と思っていたのに入場券を買い損ねて観ることが出来ませんでした。「心から」は歌と踊りシーンがカットされていることが事前にわかっていたので、観られなくても少し気が楽でしたが（怒ったインド人が金返せと、マニラトナム監督に迫ったそうですね）。
そのかわり国際映画祭の「ロージャー」「顔役」「デュオ」を観てきました。「デュオ」はインドでは賛否両論の作品でしたが、映画化された人物の「本物」を知っているとなかなか楽しめます。主人公の映画俳優は往年のタミル映画のスーパースター、ＭＧラーマーチャーンドラン（ＭＧＲ）。親友で後に政敵となる脚本家はカルナーニディ。共演女優から二度目の妻となるのはＭＧＲの本妻ジャナキ･･･、全部実在の人物です。しかもストーリーもかなりの部分がノンフィクション。若い頃のＭＧＲの姿は映画のまんま。ところが実物のＭＧＲのカルナーニディは、どういうわけか政治家になってからは、太鼓腹に短いカーリーヘア、黒メガネがトレードマークという姿に。二人の区別は縁無しの帽子をつけているか、いないか。ちょっとヤクザの「おっさん」にしか見えませんでした。まだＭＧＲ存命中に訪れたマドラスの壁という壁はこの二人のポスターに覆われていて、「こいつら何者だ〜」と思わずにいられなかったあの強烈な印象は忘れられません。
タミルナドゥではインド独立運動の中で、タミル民族のアイデンティティーを主張する政治的な思潮が強まりました。タミル語は、ヒンディー語を中心とする北インドの言語と全く異なり、またその歴史と伝統も古く、北インドに重心の置かれた独立インドに納得できなかったのです。その結果、映画にあるようなタミル地域に根差した政党が結成され（ドラヴィダ進歩同盟＝ＤＭＫ）、映画スターも脚本家も党員となったのです。やがて、最初のリーダーが死ぬとまずカルナーニディが後継者として州首相となる。その彼の背信に怒ったＭＧＲは袂を分かって新しい政党（全インド・アンナＤＭＫ＝ＡＩＡＤＭＫ）の党首となり、カルナーニディを追い落として首相となる。しかしその任期中に死去。ここまでは映画の通りです。
ちょっと違うのは現実通りではまずい点？ミス･ワールド、アイシュワリヤ・ライの演じた新人女優で愛人のカルパナは、本当は事故死せずに生きています。映画を捨て政治に邁進する男を捨てるどころか、自分も政界に入り、ＭＧＲ死去の直後にジャナキ夫人と壮絶な後継争いを繰り広げ、結局ＡＩＡＤＭＫの党首、タミルの女州首相として君臨することになるジャヤラリターその人です。州議会選挙でＡＩＡＤＭＫが破れ、返り咲いたカルナーニディによって昨年汚職、不正蓄財（そういえば、彼女の養子の超豪華なキンピカ結婚式は日本でも報道されました）で逮捕されましたが、今年の総選挙でＡＩＡＤＭＫが躍進し、中央のＢＪＰ政権を支えるキーになったために、その存在はインド政界を動かしうるものに！おそるべし！でも、ジャヤラリターの素顔は目を開けた「おかめ」そのもの。しかし映画を観ながら、アイシュワリヤがジャヤラリターなのかと思うと笑わずにはいられません。その辺が気になって、マニラトナムはカルパナを「消して」しまったのでしょうかね。
まもなく開催されるバンコクのアジア大会。日本で放送があるかわかりませんが、印パのカバディ、男女フィールドホッケー（インドの女子チームはお下げ髪を振り立てて可愛いですよ）、ウシャが出る女子陸上、ブパティとパエス組の出る男子テニスなど要チェックです。サッカーの一次予選は日本、インド、ネパールが同組なので一つくらいは放映が期待できるかも。
目次
＊皆様のおかげです、発送作業
＊大盛況！ ２０念記念祝賀会速報
＊インド活動写真館15：ハリジー、映画音楽を語る（上）（次良丸 章）
＊東京国際映画祭速報寄稿、「心から」を見て（岡口良子）
＊私だけのインド料理講座：ラムの宮廷料理、揚げパンのミルク煮菓子（由利三）
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