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2018.9.1発行、第479号
8月17日、イムラーン・カーンがパキスタン首相に就任した。
それに先立つパキスタンの総選挙の結果が接戦となり、イムラーンの党が第1党ではあっても、政権を維持できる連立支持を確保できるか微妙だったことや、そもそも総選挙に至る政界や社会の混乱というか乱脈というか、そのあたりまで書くと大変なことになるので省略する。
ともかく、すったもんだの末にイムラーン・カーンは首相になった。日本で紹介されたのはそこからだったが…、イムラーン・カーン、ご存知だったろうか。
パキスタンの元クリケットのスター選手。
「スター」以外の表現を見かけないのだが、あるいは「英雄」もあったかも？ そんなもんじゃないのよ、イムラーン・カーンだよ？ 国民的英雄？レジェンド？
インドにはサチンがいるけれど、これも日本では分かってもらえない感覚だし。長嶋さん？長嶋さんは政界に食指を示すなんて考えられない人なんで、比較できないかなあ…。
パキスタンもインド同様、クリケットが至高のスポーツ。他には国民を巻き込む文化・社会現象が少ないし、インドと戦うという英雄性があるし、有名クリケット選手のプレゼンスはとてつもなく高い。そして現在のところパキスタンが優勝した唯一の、1992年ワールドカップを主将として率いていたのがイムラーンでだった。
現役選手だったイムラーンの勇姿は、精悍で整ったルックス、しなやかに動く美しい体、とにかくセンセーショナルだった。その当時、一部とはいえインド女性でさえ、あれはパキスタン選手だぞという夫や父の非難も憚らず、イムラーンの名を呟くだけで目がハートになっていたものだ。
そして容姿に違わぬ、小説や映画の人物か、伝説の映画スターばりのモテ男振りを世界規模で展開していた。現役引退後にまともな段取りの結婚を3回しているが、選手時代には事実婚に近いパートナーを筆頭に、両手に余るほどの数の表沙汰になった恋人がおり、知られている婚外子と、本人に認知されていない、そして本人も存在を知らない婚外子さえもが複数いると言われている。ドンファン時代の恋人はほぼ全て欧米人。ボリウッド女優もいる。そもそも私がイムラーンの名を知ったのも、対インド戦の試合結果ではなく、新しい恋人の出現を伝える(インドの)記事だった気がする。
私も、まだ印刷の悪かったインドの雑誌の彼の写真を切り抜いて持っていたりした。今、ネットで検索しても、ヒットするのは昨今の画像ばかり。政治に参入して以降は人物も外見も別人とまでは言わないが、昔がどれだけゴージャスだったかを力説するのが虚しくなるのが残念…。そう、当時は「インドの女優はとてつもなく美しいが、男優はなんで醜男ばかり」という声に大きく頷ける時代だったのだが一方で、いや探せばいるんだよ、だってイムラーン・カーンがいるじゃないか、と力強く思っていたものだ。
主将から首相に転身した今、あの当時のイムラーンを知るインドの複数のマダムに会ったが(当時を全く知らない若い子も含めて)「ホントに信じられないくらいハンサムだったわ。引退してから急に変な人になっちゃったわね。ジェマイマ(最初の正式な結婚相手。ユダヤ人大富豪の娘でセレブ。年齢差の大きい若妻で、パキスタンの英雄の結婚としては国民の大きな顰蹙を買った)なんかと結婚したからかしら」と息巻いていた。
「それに比べると、ドラヴィドやガングリー(2000年代前半のインドのレジェンド選手。代表コーチやコメンテーターとして今も露出度が高い)は変わらないわねー。引退してかなり経つけど、相変わらず凛々しくてハンサムだわー」
これにも私も大きく頷く。ただしインドのレジェンドやスターには私生活でイムラーンと張るほどのきらびやかな経歴の色男はまずいないから、正直比較にならないのだけれど。
目次
・南アジア地誌事典 第254回 「千年のスカダー家とアルコット・ミッション カートパーディ、ヴェールール」（関口 真理）
・「ベンガル語訳『海辺のカフカ Samdratate Kafka』、ベンガル人と村上春樹」（デヴァリナ・ムケルジー）
・私だけのインド料理講座上級編「パールシー料理 No.39 第10回 パールシー 10-@EEDA NO PORO（卵料理）」（由 利 三）
