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　昨月のこの欄に「インドのゴム製湯たんぽ」という話を書いたところ、インドにお住まいの方から「冬に寒くない私の土地では、あのゴム・バッグは水枕としての利用が主目的」というご教示をいただきました。ゴム・バッグの口が小さいので氷は入れないということ。逆にこの方は、湯たんぽとしての利用法は本欄ではじめて知ったそうで「今度、ヒル・ステーションのホテルで湯たんぽを頼んでみたい」とのことでした。身近な暮らしのウンチクは、この方のように住んでみてこそ判るというものでしょうが、それでも違う土地のことは新鮮に見えるものなのですね。

　さて、今年は日本とネパールの国交50周年だそうです。すでに2002年にインド、パキスタン、スリランカとは50周年（同年、バングラデシュとは25年）を迎えていますが、1950年代初めまで鎖国していたネパールとの国交はやや遅れて始まったのでした。02年には景気よく４つの国と日本の友好記念の切手が発行されましたが、日本・ネパール50周年の記念切手は郵政会社の今年の発行予定リストにありません。ネパールは日本人の大好きな国ですが、誰も郵政会社に運動しなかったのかな？

　小国の割に、日本人の関心が非常に高いネパールですが、ちょうど1年前の昨年2月から政局の混乱が続いています。それより以前から、地方に勢力を拡げてきた極左勢力（マオイスト）がカトマンズと中央政府を脅かす存在になってきたところに、前国王と王室一家が皇太子に虐殺され（たとされ）る惨劇が起き、政府とマオイストとの緩衝役でもあった前国王の存在が失われました。自殺した（とされる）皇太子に代わって即位した現国王はマオイストの攻勢を留めることができず、民主政府も派閥争いに明け暮れ、国王との連携も決裂。ついに1年前、国王が強権を発動して実権を掌握し、主要政治家を逮捕して、今日に至っているのです。

　1990年以前の国王絶対体勢への逆戻り、とまで言われたセンセーショナルな1年前の出来事以降、マオイストの攻勢が時々伝えられるものの、事情はあまり見えてきません。首都でもテロが起きたり、外国人が誘拐されたりという物騒なネパールから観光客が引いてしまっています。ネパールでは、車や飛行機でアクセスできる場所は非常に限られています。それでもトレッキングや学術調査で、辺鄙な所ほど外国人がよく行くネパールには、そんな不便なイメージがありませんでした。けれども、そんな辺境をマオイストが制圧している今、ネパールのことが国交以前のように遠いものに感じられてしまいます。

目次

・南アジア地誌事典・第116回　「2005年1月　コルカタ、レコーディングスタジオ」（寺原　太郎）
・India will Rock You!　第10回　「ガダ・ダ・ヴィダで華麗に舞う鋼鉄の蝶」 （渡辺　玲）
・「日本初、インド人学校(1)　---誕生と校長の情熱」（柴原　三貴子）

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