| Mariamma's Homepage（インド、南アジア総合情報） |
マリアンマのＨＰ
What's New
月刊『インド通信』
| 『インド通信』（インド、南アジア情報月刊誌） |
インド通信のＨＰと最新号情報
バックナンバーとホームページエッセイ
インド通信の催し物ガイド
インド通信の新刊情報（最新版）
新刊情報（バックナンバー）
インド通信バックナンバー
2021.9.12
Last Revised: Sept 12, 2021
「パキスタンの旗手、すごい綺麗！」
東京2020オリンピックの開会式の進行中に、こんなメッセージが来た。こちら側でもパキスタンの旗を掲げる二人の旗手がテレビ画面に映ると、女性の方に思わず目が行って同じことを思っていたところだった。この開会式については後日、カザフスタンの女性旗手の美しさが全国的な話題になっていた。この人にももちろん気づいたが、カザフ代表が豪華な民族衣装（王侯のコスプレ？）だったのに対し、パキスタンの女性旗手はユニセックスな感じのシンプルな民族衣装だったので、そもそも目立ち方が違っていた。さらにパキスタンの旗手はよく見れば日本人好みの可愛い感じの美女だが、それほど派手な顔立ちではなかった。メッセージの発信元は日本人女性だけれどインド方面の容貌を見慣れている。派手さがなくても目にとまったということは、本当に美女と言えるのかもしれない。ただしこのご時勢に「美し過ぎる旗手」の話題は、ジェンダー問題に抵触してアウトな可能性がある。あくまで個人的好みで目をひかれたことにして、この人についてさっそく調べてみた。
この旗手はパキスタンの女子バドミントン代表であった。パキスタンで初めて正規の国際選考基準で出場資格を得た（国際競技会や予選会で基準の戦績をあげた）女子アスリートであるという。五輪は国際スポーツの祭典なので、参加国の中には国際レベルに伍していける選手が存在しない国もある。つまり「記念出場枠」で参加している国や選手も少なからずいるわけだ（日本にも今回は開催国枠出場があっただろう）。南アジアなど、大国インドにしたってスポーツ全般（クリケットを除く）が盛り上がらない世界だから、まして女子選手が育つことは難しい。さらにパキスタンにはイスラム社会という難関が加わる。それを乗り越えて、独立75年目にして初めて登場した国際レベルの女子選手！！旗手に選ばれたのは別に美女だからではない、当然といえば当然のことなのである。
ところが、パキスタンの主なメディアはウルドゥー語なので、手っ取り早く英語で読めた情報はインドのニュース記事にも手を伸ばした。するとその記事には数多くの読者コメントが着いている。数多くのコメント…、嫌な予感は的中。これはどこの国もあまり変わりがない。しかも印パ間の話である。その多くは悪意のコメント、誹謗中傷、ヘイトな内容のものである。曰く、
「国際基準の選考？ワイルドカードだろ？」
「シンドゥ（今回は銅メダル獲得、女子インドの世界トップランカー）と同列にするんじゃねーよ」
「パキスタン忖度の出場ですねー」
日本語にすれば、こんな感じになるだろうか？インド男性（少なくとも男性名で。ハンドルネームではなく、本名かどうかは別にしてコメントは記名で書かれている）は、外見が可愛いことなどに容赦なく、読んで気持ちの良くないコメントが連なっていた。
「ワイルドカード」、すなわち何らかの成績の国際基準越えではない選考方法、が本当かはわからない。この種のコメントには間違った決めつけを平然と主張する例もあるので、正式な選考であってもパキスタン人が許せないという一念でそう書いている可能性はある。試合で実際に活躍すれば、こんな言葉を粉砕できるはずであったが、彼女の初戦の相手は、なんと世界女王経験もある山口茜選手であった。エジプトなど頭巾を被ったムスリム選手もいた中、ロングヘアをポニーテールにし、足をきちんと覆うロングスパッツ姿でプレーしたのだが、山口選手相手ではあっという間に試合が終わってしまった。日本女子の山口、奥原選手（今回の五輪では活躍できなかったが）らは、ＰＶシンドゥ（日本では選手名プサルラと表記されるが、インドではシンドゥでないと通じない）の絶対ライバルとしてよく知られている。インドからすれば、ほらやっぱりの結果なのだろう。しかし日本の有力選手が相手だったので、地上波のテレビ放送があり、つくづくと試合と選手を見ることができたのはラッキーであった。
ところで、映画「チャクデー・インディア」が現実になった女子ホッケーの準々決勝、インド対オーストラリアは、ライブではネットの国際配信（英語実況）のみだった。勝利の瞬間を自前のスマホ画面から連写したものを並べると、本当に映画のようだ。試合終了後すぐに、シャールク・カーンからコーチ（オランダ人）に祝福メッセージが届いたというのも大いに納得できる。
