パキスタン郵政、ナディーム氏の金メダルを祝って記念切手発行！
黒崎 卓 （くろさき たかし）
2024年8月8日、パリ五輪でアルシャッド・ナディーム(Arshad Nadeem)氏が男子やり投げ金メダルを獲得したことを記念し、彼の業績を称える記念切手がわずか6日後の2024年8月14日に発行されました。
パキスタンでは毎年、8月14日の独立記念日に、それを祝う切手が出されることが多かったのですが、2024年は当初、何も発行予定がありませんでした。そこで急遽、ナディームさんの図案の切手を出すことを、金メダルの2日後の2024年8月10日に担当大臣が発表しました。
世界中で近年は五輪のメダリストを称える記念切手が乱発されているのですが、それは大きく、いわゆるMy Stampという簡易切手（切手の額面や国名を示す共通の枠の中に、自由に写真を差し込むタイプで、比較的少ない数が印刷されて、通信販売だけで売られる速報タイプのもの）か、大量に印刷され全国の郵便局窓口で購入可能な通常の記念切手に分かれます。日本では前者のみが最近、制作・発行されています。後者は古くからあるスタイルで、パキスタンでも1960年ローマ五輪のフィールドホッケー金メダル記念切手が1962年に、1968年メキシコ五輪のフィールドホッケー金メダル記念切手が1969年に発行されています。図案を準備し、製版し、大量に印刷し、全国の郵便局に配送するには最低でも数か月かかるのが常識です。
1962年発行のローマ五輪金メダル記念切手
1969年発行のメキシコ五輪金メダル記念切手
今回のパキスタン切手のニュースを耳にし、「8月10日に発表して8月14日に発行可能なのか？」というのが私の第一印象でした。報道の切手はきちんとした古典的な切手に見えました。9月半ばに私に届いたパキスタンからの郵便物に貼られたこの切手の現物を図に示します。Gujranwala GPO郵便局で2024年9月5日に消印されています。製版・印刷の質も高い切手でした。
パキスタンの知人に問い合わせたところ、実際8月14日に発行され、記念切手発行のセレモニーも行われたが、8月14日には、ごく少量がごく少数の中心局のみに配備されたとのことでした。そのあと少しずつ各郵便局に配送されていったようです。
カラチ中央郵便局郵趣窓口の2024年8月14日の初日印が推された公式初日カバー
パキスタン初の個人競技の五輪金メダルは実にめでたいこと。印刷局の人たちはこの記念切手を2024年8月14日に合わせるために、毎晩徹夜に近い作業をしたのだろうと思います。今回の金メダルを国を挙げて祝う雰囲気が伝わってきました。
# 本稿は、日本パキスタン協会会誌『パーキスターン』第285号(2024年10月)pp.29-30掲載の「ナディーム氏の金メダルを祝って急遽、記念切手発行！」を改訂したものである。
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